わけあってイケメン好きをやめました
 お互いに家族の話など今までしたことがなかったので、新鮮だとばかりに虹磨さんが食いついてきた。


「姉と私、仲は悪くないんですけど、性格が正反対なんですよ。姉は生真面目で、恋愛とかエンタメには興味がなくて……」

「恋愛に興味が薄いのは、堤もだけどな」


 そのおかげで美和さんは仕事に集中してくれているのもあるのだから、笑うより先に感謝しなければいけないのに。
 どこまでも、ふたりの間には遠慮がないみたいだ。


「そろそろ着くぞ」


 たわいもない会話を続けている間に時間は過ぎていて、高速道路のトンネルを抜けた瞬間、左手に海が見えた。


「まだ寒いからそんなに長くはいられないけど、少し浜辺を歩かないか?」


 高速を降り、虹磨さんが海辺に隣接された公園の駐車場に車を停めて、私たちは外に出て波の音を聞いた。
 風は冷たいけれど、潮の香りがして海に来たのだと実感が湧く。

 少しだけ散歩して、石段が作られているところにふたりでちょこんと腰を掛けて景色を楽しんだ。


「海はいいな。都会の喧噪(けんそう)を離れて解放感に浸れる」


 虹磨さんは体を後ろに倒して地面に両手をつき、気持ちよさそうに天を仰いだ。イケメンだとこういう姿も絵になる。

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