わけあってイケメン好きをやめました
「さっきも言いましたけど、私、お財布がないので……」
「え、要らないだろ。まさか絢音、自分で払う気? 俺に恥をかかせるなよ」
虹磨さんは苦笑いの笑みをたたえつつ、私の頭にポンポンと手をやる。
考えてみればそうだ。虹磨さんが私のような小娘のお金を受け取るはずがない。
恥ずかしさから「経費で落ちませんからね」などと、美和さんみたいな小言を言いそうになったが、グッと飲み込んだ。
お店は歩いて行ける距離にあるらしく、私たちは車には戻らずに直接向かった。
虹磨さんが「ここだ」と告げて入っていったのは、ハワイアンレストランだった。
このタイミングで借りていたジャケットをそっと虹磨さんに返す。
海沿いに建物が建っているため、案内された席は窓からの眺めが最高で、もっと見ていたいと惜しんでいた夕日が窓越しに私たちをオレンジ色に染めた。
だけどもうすぐ沈んでしまう。切なくなるようなマジックアワーだ。