わけあってイケメン好きをやめました
「絢音はなに飲む? ビール? 俺は運転があるから飲めないけど」


 イケメンとオシャレなお店で食事をするため、テーブルを挟んで向かい合わせに座っている。このシチュエーションに、胸がドキドキと高鳴ってきた。
 職場ではあまり真正面から目にすることはない虹磨さんの顔を拝む。綺麗な顔に、広い肩幅と筋肉質な腕……何度見ても理想的だ。


「私もノンアルコールでいいです。特にお酒が好きなわけでもないので」

「そうか」


 料理は「嫌いなものはあるか?」と最初に問われ、「ありません」と答えると、虹磨さんがコースになったグリルメニューを頼んでくれた。

 しばらくして運ばれてきたノンアルコールビールで乾杯をする。
 成り行きだったとはいえ、私は今、虹磨さんとデートのような時間を過ごしているのだなと意識したら、なんだか緊張してきた。

 出て来た料理はサラダや前菜を始め、とてもおいしかった。
 ドレッシングやソースの味が絶品で、食していると何度も笑みがこぼれて魅了された。さすが虹磨さんおすすめのお店だけのことはある。


「車の中で話してた絢音の姉さんの話に戻るが、エンタメには一切興味がないのか?」


 なぜかこんなに時間が経ったあとで、虹磨さんが姉の話を蒸し返してきた。

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