わけあってイケメン好きをやめました
「大和のことは……すまない。俺のせいだ」

「……え?」

「アイツに悪気はないから、今日の事は忘れてやってくれないか」


 自然と顔を上げれば、ゆらゆらと揺らめく虹磨さんの瞳があった。
 いつも堂々としている人だから、こんな表情は私は初めて見る。

 姉のことを急に聞き出したのは、この話をしたくて誘導するためだったのだろう。


「俺が、動画の人物を探していたのが原因だ」


 私から真実を告げなくても、彼はなにもかもわかっているとばかりに、力のない笑みを浮かべた。


「“俺のせい”、なんですか?」


 あの動画の人間が私かどうか、わざわざ大和さんに探りを入れさせたのだろうか。
 いや、大和さんを止めに入ったときの虹磨さんの姿を思い出せば、それは違うとわかる。


「絢音がバイトに来る前……動画が話題になってた頃、俺は大和に心当たりがないか尋ねた。音楽についてはアイツはプロだし顔も広いから、誰か知り合いに聞いてみてほしい、と」


 きっかけはそれだけだったのだ。
 あれは誰なのか、ミュージシャンである大和さんに聞けば、なにかわかるかもしれないという誰しもが抱く単なる興味から。
 たしかに、デビュー前の子がSNSを使って動画をアップするケースもかなりある。

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