わけあってイケメン好きをやめました
「大和が初めて絢音に会った日、手を見て気づいたそうだ。動画に映っていた右手にも、よく見ると同じ位置にホクロがあったらしい」

「だ、だけど、あの動画はすぐに削除しました!」


 虹磨さんが困ったようにうなずいたところで、デザートのアイスクリームと食後の飲み物が運ばれてきた。


「バズってから消すまで、何日かあっただろ? 大和は何度も動画をチェックしてくれてたから」

「目を凝らさないと手元の小さいホクロなんて見えないのに……」

「そうだな。それと、俺もだが大和は耳がいい。絢音が話してる声を聞いて動画の人物かもしれないと思ったらしい。ホクロと声、このふたつの要素で絢音じゃないかと」


 大和さんは探偵もできますね、などと冗談を言う雰囲気でもない。
 だけどさすがプロのミュージシャンだ。音楽に関しては常にアンテナを張り巡らせているのだろう。

 目の前にあるバニラアイスが溶けていくので、スプーンですくって口に運んだ。
 それを見てようやく虹磨さんも自分のアイスに手をつける。


「話し声と歌声がかなり違って聞こえる人間もいるから。絢音に歌わせることができれば判定できる。大和は決定打が欲しかったんだ」


 だからカラオケに誘われたのだと合点がいった。そのシチュエーションなら自然に私が歌うだろうと大和さんは考えたのだ。

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