わけあってイケメン好きをやめました
「虹磨さんは、動画の人物を探し出してどうする気だったんですか?」


 探し出すもなにも、あれは私なのだからすぐそばにいたのだけれど。
 美和さんだけでなく、大和さんにまで心当たりがないかと声をかけていたのはなぜなのか。


「ん? 動機か? ただ会ってみたかっただけだ」

「……え?」

「実際にどんな人物なのか気になった。絢音の声は透明感があって、自分で思ってるより相当いいから」


 呆気にとられ、体から力が抜けた。歌声が褒められたのはうれしいけれど、理由が単純すぎる。


「スカウトして音楽事務所を紹介したりしないから安心しろ」

「わ、わかってます!」


 薄暗闇の中、虹磨さんが小さくあははと笑う声が聞こえた。
 よかった、これで動画の件でのモヤモヤは今後お互いになくなる。


「家まで送る。……あぁ、会社に財布を置いてきたんだったな。取りに戻るか」


 虹磨さんがスマホを取り出して操作し始めた。液晶の明かりが彼の綺麗な顔を浮かび上がらせる。


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