わけあってイケメン好きをやめました
「うわ、メールが山ほど……。堤、まだ会社にいるかな。さすがにこの時間だから帰ったか?」


 時刻は午後八時半を過ぎているので、美和さんはもう帰宅している気がする。


「あ! 美和さんに電話するならあとで私に代わってください! いろいろ謝らないと!」


 動画の件は後日あらためて説明しながら謝るとして、今日のことだけでも先に謝罪しておきたい。
 仕事は大丈夫だっただろうか。忙しくさせてしまったに違いないけれど……


「堤はめちゃくちゃ懐かれてるな」


 あきれ混じりの声と共に、虹磨さんが私の頭にポンポンと大きな(てのひら)を乗せた。


「美和さんだけじゃないです。虹磨さんのことも違う意味で好きです!」


 虹磨さんの手がピタリと止まり、そのままそっと離れていく。
 私は今、どさくさに紛れてなにを言ってしまったのだろう。両手で口を押えたがもう遅い。


「違う意味、とは?」


 虹磨さんが電話をかけようとしていた手を止め、再びポケットにスマホをしまった。

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