わけあってイケメン好きをやめました
「なにかあった?」

「……え?」

「虹磨さんね、朝一番に私をいつものように「堤!」って呼んだんだけど、昨日は悪かったとか柄にもない謝り方したし、やさしすぎて気持ち悪かったの」


 それはきっと、私が美和さんをもっと大事にしろと助言したからではないだろうか。
 そうする、などとはっきり返事はしていなかったものの、一応は私の意見を聞き入れてくれたのだと、なんだかうれしくなり、自然と顔が緩んだ。


「その顔……ほんとになにかあったの?」


 もう一度、今度はもっと真面目な顔で尋ねられたので、私はまず美和さんに動画の一件を謝った。
 動画の人物が私だと告げると、驚きはしていたが不機嫌になることはなく、美和さんは笑って許してくれた。

 昨日もレストランでその話になり、私が泣きだしてしまった流れで外に出たときに、虹磨さんキスされたところまでを小さな声で一気に話すと、彼女は途端に顔色を変えた。

 私は美和さんは怒らないと思っていたのに、その予想ははずれたようだ。
 ピキピキとこめかみに模様ができそうなほど血管が浮き出ていて、怒りが露わになっていた。


「今まで一度も出来なかったけど、今日こそはやってやるわ!」

「な、なにをですか?」


 キーボードを軽快に叩いていた手を止め、美和さんは右手に握りこぶしを作る。

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