わけあってイケメン好きをやめました
 一度目は、付き合って三ヶ月くらいの頃だった。
 腕を組んで親密そうに歩く利樹と女性の姿を、私は街で偶然見かけてしまった。

 当然の如く彼を追及すれば、相手は元カノで、久しぶりに連絡が来て会うことになり、そのまま一夜を共にしたと白状された。

“久しぶりに”と利樹は口にしていたが、本当はその元カノとずっと繋がっていたのかもしれない、と私の疑いは晴れなかった。

 だからこのときは、別れたほうがいいのかと、そんな考えも少しだけ頭をよぎった。
 ずっと二股されていたのなら、さすがに付き合い続けるのは無理だ、と。

 だけど利樹は元カノとのやり取りの履歴を私に見せて、二股を完全否定した。
 スマホに表示された元カノとのメッセージは、ふたりが関係を持った日以前にはやり取りがなく、その後もパタリと連絡が途絶えていた。

 利樹には謝られたし、もう二度と元カノには会わないと約束するから許してほしいと言われ、私は悲しい気持ちにケリをつけて承諾した。
 私は単純だ。利樹が元カノではなく私を選んだのだと思ったら、それがうれしかったのだ。

 そんなことがあったのに、一ヶ月前に再び浮気されたときには、かなり打ちのめされた。
 彼が浮気することはもうない……なぜかそう信じてしまっていたから。

 しかも、一度目の発覚時は平謝りだったのに、二度目のときはなんとなく真剣さが足りない気がした。
 軽い気持ちでの浮気だったから、私に対してもそんなに悪いと思っていないのだろうか。

 いつのまにか私たちは形勢が逆転した。
 許して欲しいと懇願していたのは利樹だったはずなのに、今は私のほうが別れたくないとしがみついている感じだ。

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