わけあってイケメン好きをやめました
 私の言った“好き”を、なかったことにしないと言い、虹磨さんはキスをくれたけれど、言葉での返事はもらえていない。
「俺も好きだ」だとか「付き合おう」みたいな文言はなかった。だから正確に言えば、付き合っていないと思う。


「そんな中途半端な状態で絢音はいいの? 私ならはっきりさせたい」


 私も同じだよ。でも、付き合えるのなら晴れて彼女になれるけれど、ダメなら顔を合わせづらくなる。

 ㈱ゲインでの仕事は楽しくて、人間関係なども不満はないし、居づらくなるのは嫌だ。
 ……いや、それよりも。
 職場環境がどうのと言う前に、私は毎日虹磨さんの姿が見られるのがうれしい。至極単純な話だ。

 この恋心が成就してもしなくても、そばにいたいと思ってしまった。こんな気持ちになったのは生まれて初めてだ。

 ずっと今の状況のまま、なにも進展しなくても構わない。彼にはっきりと拒絶されるほうが何倍も嫌だから。

 あははと自虐的に笑ってみたが、円香は右手で頭を抱えてあきれた顔をした。


「私が大人の女だって、虹磨さんに認識されてないかもだし……」

「そんなこと言ってて、体だけ求められたらどうするのよ!」

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