わけあってイケメン好きをやめました
 虹磨さんはそんな人ではない、と否定したい自分がいる。だけどそう言い切れるほど、あの人を深く知ってはいない。


「もしそうなったら、それでもいいよ」

「は?!」

「もし虹磨さんが私を抱きたいって思ってくれたのなら本望!」


 おどけるような口調の私に、円香はてっきりまたあきれるのだと思ったけれど、彼女は目を泳がせてあきらかに心配そうな顔をした。

 でも、今の発言は私の本心だ。
 虹磨さんのそばにいられるのならなんでもいい。体だけの関係は虚しいとわかっていても。

 その前に、虹磨さんが誰かれ構わず抱くとは思えないけれど。


「バカね」

「そうだね。バカだ。だから私は元カレにも何度も裏切られてきたんだろうね」

「ほんと、アンタは懲りない。惚れたら一途にまっしぐらだもん」


 円香はあきらめたようにうなだれ、手元にあったビールをごくごくとあおった。

 私がイケメンに弱くて失敗ばかりしているから、円香は心配が尽きないのだとわかっている。
 親友を心労で倒れさせたくはないし、しっかりしなくてはと思うのだけれど。
 私は同じことを繰り返していて成長しない人間だ。

 でも、最初から人を疑うのは嫌い。好きな人のことは信じたい。
 
 なので今は、虹磨さんは私を傷つけないと、全力で信じようと思う。

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