わけあってイケメン好きをやめました
「そう言えば、マジでどうでもいいんだけど……」

 
 円香はそこまで言っておきながら話を止めてしまった。そうなると余計に気になってしまう。


「なに?」

「私たちがよく行ってたライブハウスあるでしょ? あそこでこの前、“RED PURPLE”が出る予定だったライブが突然中止になったって聞いた」


 それは、私と元カレが出会ったライブハウスだ。
 円香の家からわりと近くにあり、まだ無名なバンドがライブをおこなっているのだが、私はそこのステージで歌う利樹を好きになった。ちなみに別れたのも同じ場所だけど。

 利樹と別れてからは当然のごとく、私はそのライブハウスには通わなくなった。だけど円香はたまにほかのバンドの出演を見に行っていたのかもしれない。


「絢音の元カレのバンド、メンバー間で喧嘩が絶えなくて解散の危機だって」

「……そっか」

「目立つとこに貼ってあったポスターもなくなってる。……って、ごめん、本当にどうでもいいね!」


 余計な話をしたとばかりに、円香は手をブンブンと横に振って会話を終わらせた。

 かなり前だけれど、“RED PURPLE”は移籍した新しい事務所とうまくいっていないようだと美和さんが教えてくれたのを思い出す。
 私とは別れたあとだったので詳しい事情は知らないけれど、利樹のワガママが原因だとか聞いたような……

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