わけあってイケメン好きをやめました
「利樹のスマホを勝手に見たら、あなたの写真がいくつも出てきたわ。だから顔を知ってた」


 今は利樹の“彼女”なのだろうか。利樹は私と別れてこの人に乗り換えたのかな。
 それとも、彼のスマホを勝手に見たからもう破局した?

 ……って、どうでもいい。ふたりが付き合っていてもいなくても、私は知らない、関係ない。


「ちょっと話さない?」

「嫌です」

「あなたも利樹が心配だから、ここに来たんじゃないの?」


 もっとバカにするような上から目線な言い方なら、無視して走って逃げていたかもしれない。
 だけど彼女の声は、夜の(とばり)に切なく響いた。


「利樹ね、あなたと別れてから絶不調なの。ボロボロで曲も作れないし、メンバーとも言い争いばかりしてるみたい」

「そんなの知らない! だいたい、誰のせいで別れたと思ってるの」

「……ごめん」


 カチンときて言い返せば、彼女は小さく肩を落として謝った。
 私が悪いみたいに言われたくない。ボロボロに傷つけられたのは私のほうなのだ。

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