わけあってイケメン好きをやめました
「堤! ボーッとしてると肉がなくなるぞ?」


 その後、みんなでバーベキューコンロを囲んでいたが、私は精神的なショックから端っこで大人しくしていた。
 なのになにも知らない虹磨さんは、網の上で焼けたお肉をトングで掴み、私のお皿に強制的に乗せる。


「ほら、食え」

「言われなくても食べますよ。これ、上等なお肉ですもんね」


 小さく憎まれ口をたたくと、周りにいた人たちの笑いを誘った。 
 私と虹磨さんはいつもこんな感じなのに、どうして誤解されるのかわからない。
 
 葉山くんと両想いになれなかったのを、すべて虹磨さんのせいにしてしまいたかった。

 でも、私も悪いのだ。虹磨さんとは互いに恋愛感情がないからこそ、今の関係を絶ち切れなくて……みんなに誤解させている。


 そのあとは、私の恋愛運気は下がりっぱなしだった。
 私の後ろに常に虹磨さんの影でも見えるのか、恋愛がらみで男性が私に近寄ることがなくなった。
 なので、大学在学中は彼氏はできないだろうと私もあきらめた。


「堤は恋愛に興味ないのか? ていうか、意外とモテないよな」


 澤村 虹磨(さわむら こうま)……マジで蹴ってやりたい。私に笑顔で酷なことを言うのはこの人だけだ。


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