愛して、芹沢さん
何も言えなくなったのか、伊織は下唇を噛んだまま黙り続ける。




「君、ここからどうやって帰るの?車あるから乗せて行こうか?」


「は?誰が乗るかよ」


「ここから駅まで結構距離あるし、もうバスも動いてないみたいだけど…大丈夫?」


「ご心配なく。ガキじゃないし、1人で帰れるんで。じゃ」




小さくなる伊織の背中を見つめる。





本当に大丈夫かな?



「心配?あの子のこと」


「…心配、です…。伊織、あんな感じだけど、すごくいい人なんで…。でも、ごめんなさい」


「莉央ちゃんが謝ることないよ。言い方はきついけど、若い子はみんなあんな感じだもんね」


「芹沢さんもそうでしたか?」





芹沢さんと並んで歩く。



そういえば、芹沢さんの若い頃の話し、聞いたことないな〜。
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