愛して、芹沢さん
もしこの日がきたら渡そうと、ずっと持ち歩いていたもの。




それは、___





「出会ったあの日に壊した眼鏡の弁償代です」


「…なんで?」


「全てはこれから始まったものなので…。弁償代を払って……」


「綺麗さっぱり僕とのことを終わらせる…そういうこと?」


「…はい…なので受け取ってください。少ないですけど…それは本当にごめんなさい」




と今度はわたしが頭を下げた。




これでよかったんだよね?



間違ってないよね…?





「僕……莉央ちゃん無しでどう生きていけばいいんだろ…」


「…芹沢さんに相応しい人は他にいるはずです。きっとすぐ見つかります」


「……」




きっと、芹沢さんと目を合わせるのはこれが最後。



だから、笑って見せた。
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