愛して、芹沢さん
「じゃ、帰ります…」




このままここにはいられない。



泣き顔を最後にしたくないし、早めに出ていかないと。




玄関に向かう途中、後ろから抱きしめてきた芹沢さん。



「…莉央ちゃん……本当に僕から離れていくの?」


「っ…もう決めたので」


「……そっか…。でもこれだけは忘れないで?… 僕が好きなのは莉央ちゃんだけだよ。それはこれからも変わらないから。だから、いつでも…っ」




そこで言葉を止めると離れた。




よかった…最後まで言われなくて。



あのまま最後まで言われていたら、気持ちが緩んでしまったと思うから。





「さようなら…芹沢さん」



そう言い残しマンションを後にした。



不思議なことに意外と涙が出てこない。
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