ひととせと、マタタビ
汐桜は結構なトンチンカンだけど、密かに人気があったりする。
マスコットみたい、とかなんとか。
ほかの男に汐桜がどう思われてるかなんて毛ほどの興味も無いけど、さすがにこれを目の当たりにしたら黙ってはいられない。
「男女ペアだって、俺汐桜ちゃんと組みたい」
「今奏多と喧嘩中らしい。チャンスだろ」
「えー俺も汐桜ちゃん誘おうと思ってた」
「…誰が汐桜と組むって?」
「奏多だよなーやっぱ!
うん、そう。奏多しかいないって!なあ!?……ごめんなさい」
俺だって組めるなら組みたい。
きっと汐桜だってそう思っていただろう、一昨日までなら。
確実に、今誘っても絶対に無視される。
「――汐桜、俺と組まない?」
「おい奏多、湊(みなと)くん行ったけどいいの?」
湊は汐桜と同じ中学出身らしく、今までにも何度か仲良く話しているのを見たことがあった。
汐桜の仲のいい男友達、しかも名前呼びなのは俺を含めずに織と湊くらいだと思う。
「…行ってくる」