ひととせと、マタタビ
ピーーー
「「お願いしまーす」」
ついに始まった地獄の入り口。
何気なく見渡した体育館、見つけたその姿に見惚れてしまう。
奏多がいる!
今日も尊いなあ、私の彼氏……じゃなかった。てことは、元彼?
明日で一年記念日だったんだけど、無くなるってこと、だよね?
どうしよう張り切って一ヶ月前にプレゼント買っちゃったよ…私が使う?男物の時計を?
バン!!
「ウブっ」
今のはバレー部部長さんのサーブの音。
そして、それが顔面に直撃した私の漏れた声。
痛みに耐えられずしゃがみこむ私を見た審判は「タイム」と叫んだ。
「ごめんなさい!大丈夫!?」
「違うんです私がよそ見してたせいで!こちらこそすみません!」
部長さんが駆け寄ってきてくれた。
ただの自業自得なのに。
恥ずかしくて上も向けない。
体育館の中にいる人達の視線は皆私に向いているだろう。
奏多もいるのに…
顔面を打っただけで、他はなんともない。メンタルが削られたくらいだ。