ひととせと、マタタビ
顔の痛さはすっかり無くなって、試合再開。
案の定ぼろ負けだったんだけど。
来年は卓球にしようと心に決めた。
―――放課後、奏多と二人分の距離をあけて歩いた帰り道。
何を話そうかずっと考えていたら、あっという間に家の前に着いていた。
「っ奏多、あのね「あ、おかえり汐桜、奏多君も」
私の声と重なったのは、家のドアから顔を出している母の声。
「あ、奏多君良かったらご飯食べていって!ほらほら、夜は冷えるんだから中入りなさい
お母さん、買い忘れたものあるから少し家空けるね、行ってきまーす」
「え…」
―――二日ぶりの二人きりの時間。
時計の秒針の音がうるさく感じるくらいの静寂。
もともと奏多はそこまで話さないけど、私がずっと話しかけてるからこんな静かな時間は滅多にない。
先に口を開いたのは奏多だった。