ひととせと、マタタビ



「じゃあ私はこれで、お大事にしてくださいね」






ベンチから立ち上がって先輩に頭を下げる。帰り道大丈夫かな、また転んだりして。







…そういえば、スーパーで牛乳買ってきてって頼まれたんだった。
今日は大好きなシチューなのに、カレーになってしまうかもしれない。






日も落ちてきたし、はやく帰らないと…







「あ、待って!名前教えてよ、下の!
俺は織っていう!ふつうのおり!織田信長のおり!」





知ってますよ、と心の中で返事。





必死に教えようとしてるのが少し可愛いなんて思ってしまった。






ふふ、と笑いがこぼれるくらい。







「心釉(みゆ)っていいます。こころに…ちょっと説明が面倒なので省きますけど。
よろしくお願いします、織先輩」



「心釉!明日から一緒に帰ろ!」



「…なんで!?」







こうして、前後の関係だった私たちは、何故か次の日から隣同士で並んで歩くことになったのだ。


< 22 / 77 >

この作品をシェア

pagetop