ひととせと、マタタビ
いつも送り届けてくれるお礼に、と人気のアイスクリーム屋さんに寄ってアイスを買ってくれることになった。
抹茶アイスに目がない私は即決。
対して織先輩は並んでいる間永遠と悩んでいる。普通逆では?
「もう決まったの?俺まだだから、も一つ増やしてダブルでいいよ。俺だけ悩んでるの恥ずかしいから心釉も悩んで」
「二つ決まりました」
「…トリプルでいいよ」
「――次の方、ご注文をどうぞ!」
「抹茶ストロベリーチョコミントラムレーズンをカップと、バニラをコーンで」
結局四種類の豪華なアイスになった私と、他のお客さんが来てしまい王道のバニラを選んだ織先輩。
「心釉結構食べるんだね、華奢なのにどこに入んの?」
「胃です。先輩は体に対して少なそうですね、一個分けてあげます。
というか、本当にバニラで良かったんですか?」
「いいんです、好きな子が好き…な味かもしれないので」
ドクン、と変な音がする。
先輩の好きな人の話を聞くと、聞きたくないって耳を塞ぎたくなる自分がいる。
―――好きに、なってしまった。
好きな人がいる先輩に恋したって、実るはずがないのに。