ひととせと、マタタビ
「う、重たい離れて…柊璃部活は?」
背中から抱きしめられるように体重をかけられて動けない。
男の人が女の人に乗るってどういう状況だろう。
幸い今は誰もいないけど、普通にこれは絵面的におかしい。いじめだと思われてもおかしくない。
「今日休み。帰んないの?日誌埋まってるじゃん」
「…バス一本遅らす」
「一緒帰ろ」
――隣が織先輩じゃないのなんていつぶりだろう。もうバスから降りた頃かな。今日は転ばなかったかな。
二人で職員室に日誌を届け、昇降口に着く。
上履きを履き替えると外からビューっと風の音が聞こえた。
風、強いな。
そういえば台風近づいてるってニュースでやってたかも。
…やっぱり変な距離取らずに一緒に帰ればよかったかな。
私のコイワズライより先輩の命の方が大事なのに。
「心釉」