ひととせと、マタタビ
スキナヒトのスキナヒト
「――心釉、好きだ」
「…へ」
バス停までは一言も話さなかった。つまり、学校を出てからの一言目がそれだ。
突拍子の無い告白に、返す言葉が見つからない。
聞きたいことだってある。
「俺、「あの、バスがきました」
「…ハイ」
さすがにバスの中で話の続きをするわけにもいかない。
席は一番後ろ。
離れすぎでは?と誰もが思うような、あからさまな距離をとって座る。
横に座る先輩を見ると、
タイミング間違えた、気まず……って顔にはっきり濃く書いてある。
同感です。
――― いつもよりも長い時間バスに乗ってるように感じた。
ようやくバスを降り、また無言で歩き始める。
「心釉、返事ちょうだい」
そう言ったのは初めて私たちが出会った場所、先輩が転んだ所だ。
うん、改めて見ても転ぶような要素は何も無い。コケた理由がまるで分からない。