ひととせと、マタタビ



「…先輩が言ってた“好きな子”は私だったってことですか」





「うん、あれで気づくと思った

心釉って俺の前ではあんまり笑ってくれないでしょ?
でも学校で見かける心釉はいっつも笑ってて、その顔俺だけに見せてくんないかなって思ってた」







『――あんまニコニコするような子じゃないんだけどたまに笑った時が可愛い―――』







…好きな子の好きなとこ、って言ってた時のだ。







「あと、バス降りる時心釉は絶対お礼言うんだよね。俺はそれ出来てなくてさ。
バス降りたあとに心釉の声が聞こえて、俺も見習って言うようになった」






「…くしゃみなんて、してません」



「嘘だ?俺が歩きながら寝てた時の話だよ」






あ、織先輩と知り合う前の…







寝ている先輩を起こすために、住宅街中に響くようなくしゃみの真似をした私の恥ずかしい思い出。







「改めて口に出すと俺相当危ない奴だよね。
あの声ぼんやり覚えてて、心釉に話しかけてもらった時、この子だ、ってなった

――その時点で心釉の事好きになってたよ」






バニラが好きかも、と言ったのは
私からバニラの匂いがするから、らしい。




そういえば、最近付けてるコロンがバニラ系の香りかも。



< 34 / 77 >

この作品をシェア

pagetop