ひととせと、マタタビ
「遅れましたー」
皆がグラウンドを走っている最中、声がしたほうに顔を向ける。
その姿が目に入ると、胸がぴょんと跳ねた。
「柊璃(しゅり)くん、遅かったね」
「あー……今振られてきました。
桃子(ももこ)さん、俺練習どころじゃない休んでいいですか?」
「……休んだらリレメン外れてもらう」
「アップいってきまーす」
柊璃くんは靴紐をキュッと結んで、みんなの輪に入っていった。
…まって。まって、振られた?
柊璃くんに好きな子がいたのは知っていた。
仲良さげに一緒に帰ったりしていたのも見たことがある。
その子とは幼馴染だって言っていた。
私はずっと柊璃くんに片想いだけど、幼馴染って羨ましいなって思ってたけど…
これはあんまり嬉しくない。
…泣いちゃいそうな顔、してた。