ひととせと、マタタビ



アップから帰ってきた柊璃くんを見ると、さっきとは別人みたいに笑っていた。





その表情が余計辛そうに見えて、何を言おうにも傷を深くしてしまいそうで私は開きかけた口を噤んだ。







「マネさん、スターターお願い」


「今行くー」


「桃子ペース走やるからタイムよろしくね」


「わかった、カラーコーン置いてくるね」






暇が無いくらい忙しくても、つい姿を探してしまうのは柊璃くんで。






…うん、今は練習しか考えてなさそう。



って私が他のこと考えてどうする。タイム読み間違えないように集中、集中だよ。






「柊璃、この後バトン練習」




「はい」





柊璃くんは特色でこの高校に入るほど足が早い。




今まで一年生でリレーのメンバーに選ばれるなんてことは、ほとんど無かったと思う。










恋に落ちたのも、柊璃くんの走っている姿を見たから。


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