ひととせと、マタタビ
「柊璃俺の代わりにカウン「柊璃くん、すぐ終わらせるから。陸上の本とかもあるよ。
それか、ここまで来てもらってごめんなんだけど明日に振替してもらうとか…」
「いや、桃子さんの手伝う。影璃は自分でやって。
背表紙に貼ってあるの見て棚に戻せばいいですか?」
背負っていたリュックを下ろし、本がたくさん入っている重たい箱を持ってくれる。
「うん、ありがと柊璃くん。じゃあ私はあっちの棚やってくるね」
「……え、まず君たちなんで一緒にいるの?」
―――始めてから二十分くらいは経っただろうか。
自分の分が終わって、柊璃くんが担当してくれている本棚の方に向かった。
「…寝てる」
図書室の一番奥のテーブルで、リュックを枕がわりにして寝息を立てている柊璃を見つけた。
なんか、顔色悪い?
向かいに座ってじっと顔を見る。
悪い夢見たって言ってたし、よく眠れてないのかもしれない。
私も、前に付き合っていた彼氏に振られた日は一睡も出来ずに泣いていた。
柊璃くんは今それと同じような状況にいるのかもしれない。
その人が居なくなったら自分が自分じゃなくなりそうで怖くなったり。
辛いよね
大丈夫だよ、って言ってあげたい。
部活だって、恋だって、辛くなったら私がそばにいるよって。
…私じゃだめですか、柊璃くん
窓から入ってくる秋風でサラサラ揺れる柊璃くんの髪。
自然とその髪に手を伸ばして、少しだけ触れる。
「…ぎゅってしたいな」
…わあ、自分の発言に自分で引いてる。
私が柊璃くんの隣に立つなんて、夢のまた夢のまた夢のまた……
夢を何回越えたらそんな世界線にいけるんだろう。