ひととせと、マタタビ
なんでこうなったの?
…私じゃないのに。柊璃くんがこうしたいのは別の人なのに。
好きな人から抱き締められるなんて幸せでしかないのに、誰かの代わりになるのはどうしても嫌で、力いっぱいに柊璃くんの胸を押した。
「…もう駅だよ柊璃くん、じゃあ私反対方向だから先に行くね
あ、埋め合わせは今度するね。お疲れ様!」
「…お疲れ様です」
この関係は、どこがゴールなんだろう。
大会でベストが出たら?柊璃くんの色んな不安が無くなれば?
…柊璃くんの恋が叶ったら?
『―――告白できなかった俺が悪いんだし』
次にこの言葉を口に出すのは私だ。
言わないままだと柊璃くんは私から離れていっちゃう。
それは絶対に嫌だ。