ひととせと、マタタビ

器用なふたりです




「――先生おはよ!
また寝坊したの?うしろ寝癖ついてるよ、今日で最後だよ頑張って〜」





壁に寄りかかってやっと立てている先生から今日もしっかりと元気を吸い取る。
これでも科学の先生兼、生徒指導担当なので、週に一度昇降口前で服装チェックをしている。





学校最終日、明日から冬休み。
とはいっても部活はあるから学校には行くようなんだけど…。






「寒い寒い、寒いよ。あ、光理カイロ持ってんじゃん、ちょうだい」




「しょうがないなー」





二つ持っていたカイロを一つ渡すと、代わりに小さい紙が先生の手から落ちてくる。






これは…?





チラ、と先生を見ると少しだけ微笑んですぐ目を逸らした。





…笑った。しかも学校で。





怖いな?






教室に入り、自分の机でさっき渡されたメモらしきものをポケットから出した。
小さすぎて、開くのも難しい。






『ほうかこ
としょしっ』





…どうして伝えたいことも伝わらないほどの小ささにしたの?
でも確かにこれだと誰かに見られてもバレる心配は要らないだろう。





このメモを書いている影璃を想像して、思わず口角が上がってしまうのを必死で抑えた。


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