ひととせと、マタタビ



―――初めて二人で家を出た。





外は真っ暗で、街灯の淡い光だけが浮いている。





家を出る時に渡された男の人用のマスクを付けて、積もった雪の中を歩く。






影璃はマスクに加えて今日はワックスを付けているので、いつもの影璃とは別人だ。
雰囲気の違う影璃にドギマギして、実は今日はあんまり目を合わせられていない。






「――着いたっと」






そこには、大きなツリーのイルミネーション。
赤、緑、ピンク……たくさんの色に変わるその光に見とれてしまう。
床一面の雪も反射してツリーと同じ色に染まる。






「…なんで、」




「んー?聖夜の夜くらいはいいだろ、何がめでたいのかは知らないけど。
この時間だと人も少ないしな」











時間が止まればいい、なんて思ったのは初めて。












お店の前でプレゼントを配るサンタさん、クリスマスツリーの周りもイルミネーションでいっぱい。






キラキラしたこの街は魔法みたいだ。


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