バーチャル彼氏
今にも歌い出しそうなその声で、「私の紹介した男たちの中に、いい人はいた?」と、大声で聞いてくる。


エマの取り巻きたちが、一瞬にしてこちらを向く。


チクチクと突き刺さる視線。


今すぐ、穴を掘ってそこに埋まってしまいたい。


そんな思いにかられつつ、返事をせずに席につく。


「沢山の男たちを紹介されて、嬉しくて声も出ない? それとも、純粋そうに見せておいて、実は紹介した男たち全員とヤっちゃったとか?」


クスクスと笑いながら、『ヤっちゃった』の部分だけ強調して言うエマ。


それを聞いていたクラスメイト達からは、冷たいまなざしと冷やかしの声が飛んできた。


ピキッ……。


私の中で、何かが切れる寸前になる。


これ以上はまずい。


何か一言でも言われると、完全に切れてしまう。


ギリギリと奥歯を加味して、膝の上で握りこぶしを作る。


それを見て、エマはさぞご機嫌そうだ。
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