バーチャル彼氏
☆☆☆

ついた先は、屋上だった。


風が通り抜け、高潮した頬には心地いい。


「すっげ、気持ちいいでしょ!!」


と、両手を空に向け微笑む。


「うん……」


このまま空の青さに引き込まれて、なにもかも忘れちゃいたいな……。


なんて考えて、そっと目を閉じる。


真っ暗な中にもさっきまでの景色が浮かんでくる。


風がするりと私の頬をなで――次に、本物の手が私の頬に触れた。


え?


その感触に、ハッとして目をあける。


と、同時に唇を奪われていたのだ。


焦点が合わないほど近くに、瀬戸君の顔がある。


フワフワして柔らかいのは、間違いなく彼の唇で――。


「んっ……ふぁっ……」
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