バーチャル彼氏
必死でそのキスから逃れようとするけれど、ガッシリと抱きしめられて身動きが出来ない。


無理矢理割って入ってきた舌が熱い。


「やっ……!!」


抵抗しようとすればするほど、背中に回された手の力は増す。


なに?


どういう事?


今、この状況が理解しがたく、私はただ呼吸をする事で精一杯だった。


「な……に」


ようやく解放してくれて、なみだ目のまま瀬戸君を見る。


瀬戸君の唇はキラキラと唾液で光っていて、それが今までのキスが現実だったと教えている。


私は、自分の唇をグイッとぬぐい、少し震える。


本物の、ファーストキス。


向日葵ともキスをしたけれど、あれは光とキスしたようなもの。


でも、今回は違う。


ちゃんと、生身の人間が目の前にいるんだ。


「な……んで?」
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