バーチャル彼氏
これを恋と呼ぶのは、正しいんだと思う。


「でも、ひっかかるの」


「ひっかかる?」


「うん……」


このドキドキが、全部瀬戸君に向けられているものではないと、私は思う。


彼に……向日葵に似ている瀬戸君へ向けてのドキドキが、大部分を占めているように感じるんだ。


つまりそれは、瀬戸君に向日葵を被せているって事。


本当に、瀬戸君だけを見て好きと言うのなら、家まで送ってもらったときにも恋のトキメキを覚えたはずだ。


「私、一体誰に恋してるんだろう……」


見上げると、2つの大きな雲が流れていく。


あの雲たちはどこへ行くの?


私の頭上を通り過ぎることは、1つの通過点でしかないの?


2つの雲は止まる事なく、風に乗って形をかえ、やがて見えなくなっていく。


「泉、一緒に帰ろう」


聞きなれたその声に驚いて振り向くと、入り口の近くて瀬戸君が大きく手を振っていた。
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