バーチャル彼氏
「えと……。泉、です……」


恐る恐る言うと、彼――向日葵は一瞬目を閉じ、「インプットしました。あなたの名前は『エト……イズミ デス』」と、言った。


「ちっ……違う違う!!」


慌ててそれを否定する。


しかし、向日葵は満面の笑顔のまま何も言わない。


どうしよう。


扱い方がわからず、あたふたしてしまう。


そんな時だった。


「喉かわいたぁ」


と、言いながら、2つ年上の大学生。


清美(キヨミ)お姉ちゃんがバスタオル一枚の姿でダイニングへと入ってきた。


そして――。


向日葵と私を交互に見つめる。


「あんた、なかなかやるわね」


そう呟き、向日葵をジロジロと見つめる清美お姉ちゃん。


「違うよ、お姉ちゃん!」


私が言うと、お姉ちゃんはようやく向日葵の足元にある缶に気付いた。


「あー!!!」


その瞬間、お姉ちゃんは大声で叫び声を上げ、キッと私を睨んできたのだ。
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