バーチャル彼氏
☆☆☆

1人で家まで帰るのは久しぶりの事だった。


つい最近まではそれが当たり前だったくせに、なんだかもう寂しいと感じている。


私は俯き加減のまま玄関を開け、「ただいまぁ」と、力なく言い、部屋へ向かう。


チラリと清美お姉ちゃんの部屋のドアに目をやり、それから部屋に入った。


静かな部屋。


さっきの、瀬戸君とエマの姿が頭の中を支配している。


なんの話しだったんだろう……。


そう考えながら、ゴロンと横になる。


スカートがシワになりそうだったけど、そんな事もどうでもいい。


天井を見上げるといくつかシミが出来ていて、なんとなく、その数を数えてみる。


1つ2つ3つ……。


それほど古い家じゃないのに、天井のシミって増えていくんだね?


「ぬぁ~に辛気臭い顔してんのよっ」


そんなセリフで登場したのは、お姉ちゃん。


うん、そう。


今日は私より先に帰ってるなぁって、玄関の靴を見て思ったんだ。
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