バーチャル彼氏
☆☆☆

それは、丁度1年前の文化祭の日。


「お願いっ!!」


私の目の前に、両手を合わせて頭を下げるお姉ちゃんの姿があった。


私は今にも出かけるという格好をしていて、その行く手をはばむように清美お姉ちゃんは立っていた。


「でも、桃子たちとカラオケ約束しちゃったんだよ」


困ったように、時計とお姉ちゃんを交互に見つめる。


約束の時間まで、あと15分。


もう家を出ないと、約束場所まで間に合わない。


「そこをなんとかっ!!」


「でも……。なんで文化祭?」


お姉ちゃんは、神蝶大学の文化祭に友達を連れてきて欲しい。


と、朝起きたときから懇願してきているのだ。


「絶対に楽しいからっ!!」


「そうかもしれないけど……」


でも、今日のカラオケはずっと前から約束していた事なんだ。


今更変えられない。


「1年生は客寄せしなきゃなんないのよっ! ほらこれ、タダ券」


そう言って、お姉ちゃんは数枚のケットを私の手の中に握らせた。


なにかと思ってみてみると、今日の文化祭のコンサートチケットだ。


結構有名なアーティストが来るらしい。


「あぁ~……」
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