バーチャル彼氏
あまりに薄い記憶で、ボンヤリとしか思い出せない。


元々ゲームなんて興味ないし、お姉ちゃんに無理矢理引っ張って行かれた文化祭での出来事だし。


「うちらのサークルで作ったゲームを、欠伸しながら仕方なくって感じでプレイされて、瀬戸君かなり怒ってたんだから」


そう言い、思い出し笑いをするお姉ちゃん。


瀬戸君……。


やっぱり、向日葵の苗字は『瀬戸』であってるんだ。


「ごめん……」


「それで、あんたがハマるようなゲームを作ってやる! って、出来たのがバーチャル彼氏。これが出来上がるまでの間、瀬戸君ほとんど寝てないんだから」


向日葵が、私のために……。


そう思うと、頬がゆるむ。


本人は大変だったかもしれないけれど、それでも嬉しい。


「でも、残念だったね」


私はそっと呟く。


「なにが?」
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