バーチャル彼氏
「泉が今使ってるのは、言語を全部教えなきゃならないの。でも、『2』では最初からある程度会話ができるようにしてあるのよ」


「へぇ? そうなんだ」


私が頷くと、突然「始めまして、泉」と、その光がしゃべった。


私は驚き、目を丸くする。


「今までの会話を聞いて、あんたの名前をインプットしたのよ」


すごい……。


「でも、まだまだ欠点だらけ」


ため息を吐き出すと同時にそう言うと、「欠点とは、誰のことですか?」と、また光がしゃべった。


「別に……」


ヒョイと肩をすくめてお姉ちゃんが言う。


すると、光はまた反論するように「それは僕の事ですか?」と、聞いてきた。


これは一体……。


「より人間らしさを引き出そうとしたら、ただの我侭になっちゃってさぁ……」


と、お姉ちゃんが私を見る。


「我侭とは、僕のことですか? 僕が我侭なのですか? そう思うのはどうしてですか? 我侭とは具体的にどういうことですか?」


次々に浴びせられる言葉に、お姉ちゃんはうんざりした顔をする。

大変そう……。


私はお姉ちゃんに「頑張ってね」と伝えると、自分の部屋へ戻って行った。
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