バーチャル彼氏
フルフルと首を振って赤らんだ顔を振り払い、私はベッグの中から缶詰を取り出した。


「もってきたけど……?」


「せっかくだから、ちょっとは勉強させてみたら?」


え”……?

私はギョッと目を見開いて清美お姉ちゃんを見る。


『え』では足りない『え”』って顔で。


「でも、昨日だけで普通に会話ができるくらいまでになったよ?」


「甘い!!」


ドンッと、スプーンを握り締めたまま拳を作り、テーブルを叩く。


お姉ちゃんの目がキラキラ……というか、ギラギラしていて、ジッと私を見据える。


「な、なに?」


「ほんのちょっと会話ができるくらいじゃ『バーチャル彼氏』とは呼べないわ」


「え……?」


「ソレは、か・れ・し、なのよ?」


ビシッと、私が両手に包み込むように持っている缶詰を指差して言う。


あ……。


そうか。


これは育成ゲームじゃなくて、彼氏彼女を体感するゲーム。
< 45 / 163 >

この作品をシェア

pagetop