バーチャル彼氏
だとしたら、私はまだそれを体感していない事になる。


「だから、ゲーム開始してみなって」


お姉ちゃんに促され、私は渋々ながらボタンを押し、「向日葵」と、呼んだ。


でも、このままじゃ私の手の上に男が乗っかっているようにしか見えない。


するとお姉ちゃんは缶詰を私の手から奪い取り、イスの下に置いた。


あ……。


ちょうど、座っているような感じに見えなくもない。


「座らせたら?」


「え? 椅子に座れるの?」


「格好だけならできるわよ」


そういわれ、私は向日葵へ向けて「座って」と、言った。


すると、向日葵は一度ニコリと笑い、頷いて、座った。


「すごい、本物みたい!!」


声を上げる私に、鼻高々なお姉ちゃん。


そういえば、このゲームはお姉ちゃんの大学で開発されたんだっけ。


すごいよね。


こうやって人間らしく動けるなんて。


ロボットなんかだと、どうしてもぎこちなくなる。


でも、映像だからそんなぎこちなさもなかった。
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