バーチャル彼氏
私の言葉に、お姉ちゃんはマジマジと向日葵を見つめた。


「本当! よく気がついたわね」


「そ、そう?」


褒められた気分になり、ちょっと嬉しい。


「そうね。モデルになってもらう人には丸一日行動を監視させてもらったりしてるの。だから本人のクセがゲームの中に出てきてもおかしくないわ」


丸一日監視!?


それはまたすごい……。


「でも、今までこんなクセ見せてなかったよ?」


「クセも、言葉と同じよ。彼女とのコミニュケーションによって引き出されるものなの。だから、こうやって外に連れ出したりして刺激を与える人も多いのよ」


なるほど。


だから桃子は最初『持ち歩いたり』『会話したり』なんて事を言ってたんだ。


バーチャル彼氏という言葉さえ知らなかった私は、それがただのオタク系の話題としてしか認識できなかった。


「泉」


その声に、ハッとする。


聞きなれ始めたハズなのに、今まで異性に名前を呼び捨てにされた経験がないから、ドキドキするのだ。


「な、なに?」


聞くと、向日葵はテーブルの上のチーズケーキを指差して、「それは、なに?」と、聞いてきた。
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