バーチャル彼氏
たかが『愛してる』と言われた事がないんですけれど、なにか!?


「なんで急にこんな……?」


詰まっていたケーキをジュースで流し込んだ後、お姉ちゃんに聞く。


「会話がある程度の量まで達したら、『彼氏彼女』という関係に切り替わるようになってるの。用は、準備段階は終わりましたよ。これからが本番ですよ。ってこと」


「へ……へぇ」


これからが本番って……。


今まででも、充分に胸キュンしてきたんだけどな……。


多分、それは私に交際経験がないせいだ。


免疫がないから、カッコイイ男に微笑まれるだけでクラクラする。


カレカノかぁ……。


今まで憧れに憧れていた関係。


それが、今、ついに現実のものへ――。


って、違うから!!


自分の妄想にストップをかけるように、冷たい水を一気飲みする。


これは現実じゃない。


バーチャルよ、バーチャル!!


目の前に座っているイケメンは彼氏は彼氏でも、生身の人間じゃない。


そう言い聞かせ、フーフーと荒い呼吸を繰り返す。
< 50 / 163 >

この作品をシェア

pagetop