バーチャル彼氏
水族館
私は目の前の小さな水族館への入り口を、突っ立って呆然とみつめていた。


どうやら、この水族館はごくごく最近建てられたものらしい。


しかも、今だ工事途中。


水族館の向かって右側半分は青いビニールシートで包まれ、中から激しい工事音が聞こえている。


「なんじゃこりゃ」


思わず、つぶやく。


いや、本当はお姉ちゃんからチケットともらったときに気付くべきだった。


『バーチャル水族館』


って……!!


本物の水族館じゃないわけ?


中には偽者の魚ばっかりとか?


つぅか、なんでもかんでも『バーチャル』つけたらいいてもんじゃいない!!


今すぐ回れ右して帰宅したい感情にかられる。


でも……。


帰ったらきっとお姉ちゃんの筆問攻めが待っているだろう。


キラキラした好奇心満載の目を向けて、『水族館どうだった?』って聞いてくるのが目に浮かぶ。


行かないわけには、行かない。


よしっ!!


と、自分自身に気合をいれ、入り口へと歩いていく。
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