バーチャル彼氏
☆☆☆

家の前まで帰ってきて、瀬戸君にお礼を言って別れ、そして、少し深呼吸。


まだ授業の残っている時間。


なんて言って家に帰ろうかと考える。


まさか、本当のことなんて言えるワケもない。


う~ん……。


と、頭を悩ませること約十分。


無難に体調不良って事に決め、玄関のノブに手をかけた……その時。


まだ握ってもいないノブが動き、ガチャと音がしてこちら側へ開いた。


私は咄嗟に数歩後ずさりする。


が、隠れる暇はなかった。


中からカバンを持ったお母さんが出てきて、目をパチクリさせる。


「あんた、どうしたの?」


怪訝そうにそう言うお母さんに、


「え、あの、えっと」


と、焦りまくり。


言葉がつっかえ、『体調が悪くて』の一言が出てこない。


ジッと黙ったままお母さんと見詰め合う事、数十秒。


「そうだわ」
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