バーチャル彼氏
沈黙を破ったのは、お母さんのそんな言葉。


ポンッと手を叩き、思いついたような笑顔。


「な、なに!?」


「丁度よかった。今日はタマゴが安い日なんだけど、1人1パックまでなのよ。

泉、ついてきて頂戴」


と、私の手を引いて車へ向かう。


「え、ちょっと……」


ついていくのは別にいい。


でも、なにも聞かなくていいの?


問いただされたら困るくせに、そんな事を考える。


「ま、若いうちは色々あるわよ」


車を発進させるとき、お母さんは物知り顔でそう言い、微笑んだのだった。
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