バーチャル彼氏
これも、実在人物を再現した声なら、きっと歌がすごく上手。


頭もよくて、かっこよくて……。


色んな子から告白とかされてるのかな……。


なんて、思いをめぐらせる。


「泉? どうしたの?」


「ん? なんでもないよ」


そう言い、笑う。


しかし、向日葵につくり笑顔はきかないらしい、さっきまでの表情とは打って変わり、不安そうな色を見せる。


「でも泉、今日はいつもと違うみたいだよ」


「え……?」


「ほら……」


不意に、向日葵は私へむけて手を伸ばした。


もちろん、触れる事のできない光。


でも、その光の暖かさを感じた。


「涙の痕」


そう言われ、私はハッとして自分の頬を両手で包み込む。


もしかしたら、お母さんもコレに気付いたから何も言わなかったのかもしれない。
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