バーチャル彼氏
「じゃぁ……」


そこまで言い、喉まで出た言葉を飲み込む。


喧嘩して、しばらく顔を見てないと、どうなるの?


保存せずに終わったから、平気なの?


それとも――?


「向日葵と、なにかあった?」


「――…っ」


私は、向日葵との出来事をすべて話した。


エマの事は口に出さなかったけど、なんとなく、なにかがあったんだってことは理解してくれたみたいだ。


話し終えると、清美お姉ちゃんは難しそうな顔で、うなり声を上げた。


「それ、きっと向日葵が保存してるよ」


「へ……?」


「なにか大切なイベントや大きな変化があると、自動的に保存する機能がついてるの。だからきっと、向日葵は忘れてない」


「そんなっ!! じゃぁ――」


「話してあげるんだね。向日葵が納得するまで」


ドキン。ドキン。


お姉ちゃんの言葉に、鼓動が早くなる。


少しでも好意を抱いている異性に、素直に話しなんてできるだろうか?


あなたの事が原因で、イヤガラセをされました。


なんて――。
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