異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜
「ただいま」


 夕方の五時、総介さんが帰ってきた。普段は夜中になったりすることもザラじゃない。それでも一緒に暮らすようになって以前より格段に会えている。夜中に帰ってきて私が先に寝ていても一緒のベットで暖かさを共有しながら眠れる事が嬉しい。
 それに帰ってくると必ず手を洗い私のお腹を優しく撫でてお腹の中の赤ちゃんにも「ただいま」と話しかけてくれる。


「総介さん、お仕事お疲れ様でした。お疲れさまです」


「デートの準備万端だね。今日の服装もとても似合っているよ。素敵だ」


「あ、ありがとうございます」


 素敵と褒められて頬が熱くなる。


「じゃあ早速だけど出掛けようか」


 差し伸べられた手をとりマンションを出た。
 総介さんの車はいつも音のない世界だ。それがまた居心地いい。彼の声の振動が直に感じられるからだ。


「真緒、今日の検診はどうだったかい? 一緒に行けなくてごめんね」


「お仕事なんだから仕方ないですよ。こうして気にかけてくれるだけで嬉しいです。やっと安定期に入りました。来月あたりに性別が分かるかもしれないって先生が」


「よかった。性別かぁ、真緒に似た女の子だったら凄く可愛いんだろうなぁ、男の子も可愛いけど……そしたらママの取り合いになってしまうのかな」


 か、可愛い……何だか少し唇を尖らせて、拗ねた表情。見たことないようなレアな表情についジィっと見入ってしまった。
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